ポイント
- 本書はサルと人間を比較することによって、父の役割を考察したもの
- 残念ながら、父には精子の提供という以上の積極的な役割は見いだせなかった。
- でも、子どもは可愛い、それだけで十分だ。
挑発的なタイトル
挑発的なタイトルが目について購入した本である。
男なんて精子を提供するだけの余分もの、という響きが込められている。
確かにお腹の中で受精卵を育てるのは母親だし、生まれた後も母乳をあげるのは母親の専管事項だ。
男は何の役にも立たない。
男は食料の確保と家族を守るのが仕事というが
男は狩りをして食料を手に入れてくるとか、家族を外敵から守るというイメージが強い。
もちろん最近では狩りなどしないし、外的に襲われることも少ない。
現代的にいえば、外で仕事をしてお金を稼いでくるということなのだろう。
しかし、専業主婦が当たり前の家族形態になっているのは、戦後の高度成長期の日本くらいで、多くの国では共働きが当たり前だ。
日本でも戦前は共働きが当たり前だったし、最近の日本でも専業主婦は減少している。
そうなると男はなんのために存在するの、という疑問が湧いてくる。
サル学の権威による比較研究
著者の山極寿一氏はサル学の権威である。もっと細かくいえば、ゴリラを研究してきた専門家だ。
本書は表紙や副題からも分かるように、サルの生態と人間の文化を比較することによって、人間における男の役割がどのように発生してきたのかを探ろうとしたものだ。
アニメでは動物の夫婦が描かれることが多いが、実は一夫一婦制の動物はテナガザルくらいしかいない。
ゴリラは一夫多妻制だ。
チンパンジーに至っては乱婚制で、誰が父親なのかわからない。
サルの赤ちゃんは泣かない
本書では様々なサルの育児をめぐる生態を紹介し、人間と比較する。
ゴリラの父親は子どもをいつくしむ。
チンパンジーのオスは、誰の子どもかわからなくても、同じ群れの子どもは等しく可愛がる。
サルの赤ちゃんは泣かないという話はおもしろかった。
母ザルはいつも子どもを抱いているので、赤ちゃんは母親を呼ぶ必要がないのだという。
人間の母親はずっと抱いていることができないので、赤ちゃんは親を呼ぶために泣く必要があるのだという。
父親の存在意義
本書を読みながら父親の存在意義を考えてみた。
しかし、残念ながら精子の提供以上のものは見いだせなかった。
それでもよい。
子どもは可愛いのだから。